【医師監修】原因を知らずに対策したつもりに?! 加齢臭はなぜ起きる?

「最近ちょっとにおうかも…?」と、 パートナーの体臭に変化を感じた瞬間、頭に浮かぶのは幼い時に感じた祖父母のにおい。

かつては三世代同居が一般的で、日常的に年配者と触れ合いながら育った私たちは、人が年齢を重ねると「年配特有のにおい」を放つことを経験で知っています。そのにおいは当たり前に発生する自然な現象で、「祖父母を思い出す懐かしいにおい」と受け止める人もいるでしょう。

しかし、懐かしいにおいも今は昔。核家族が主流となった昨今では事情が異なり、日頃から嗅ぎ慣れていない「特有のにおい」は、若い世代からは『加齢臭』として強く認識されてしまうのです。

『加齢臭』の歴史は浅い!?

ところで、この『加齢臭』という言葉、歴史はそれほど古くないことをご存じでしょうか。『加齢臭』という言葉が広く知られる転機となったのは1999年。資生堂の研究チームが、加齢に伴って発生するにおい成分「ノネナール」を特定したことです。この発見によって「年配特有のにおい」に特定の化学物質が深く関わることが説明されました。

また、同時期の日本ではエチケット意識が高まり、体臭のケアは「清潔感」や「マナー」と結びついて、『加齢臭』という言葉にも社会的関心が集まりました。つまり、『加齢臭』の正体が解明されて、対策が語られるようになったのはここ 20数年のこと。

そこで今回は、私たちの健康意識やライフスタイルの変化とともに浮き彫りになってきた『加齢臭』について、発生のメカニズムから日頃の対策までを詳しくご紹介します。

  • 直田亨
  • ●この記事を書いた人●

    グリーンハウス株式会社

    直田亨

    ライター歴10年。出版社で10年、病院広報で10年勤務後、健康食品業界に転職。

閉ざされた空間で感じる、違和感

朝、満員電車でふと感じる違和感。エレベーターの扉が閉まった瞬間にどこからともなく漂う、あの独特の臭い。
「自分と同年代くらいの隣の人から臭ってるような…」
「まぁ、年齢だから仕方ないよね」
実はその臭い、単なる"年齢のせい"だけで発生している訳ではありません。食事、ストレス、睡眠不足 ― 普段の生活習慣の積み重ねが体内で変化を起こし、"体臭"というサインになって現れています。

さらに厄介なのは、自分の臭いには気付きにくいこと。これは「嗅覚順応」と呼ばれる生理現象で、嗅覚は同じ刺激が持続すると鼻が慣れてしまって感受性が低下する性質があります。つまり、隣の人から感じている臭いを、あなた自身も発しているのかもしれないのです。

誰でもそのうち臭う「加齢臭」

自分では感じにくい自身の臭いは、どこか他人事のようにとらえがちです。しかし、実際は特別な人だけに起こる現象ではありません。

男性ホルモンが皮脂の分泌を促す影響で元々皮脂量が多い男性は、40歳代以降に始まる皮脂の質の変化で加齢臭が強まります。
また、「男性特有」というイメージが強い『加齢臭』ですが、なんと女性でも更年期を境に、加齢臭が増加傾向にあります。これは、男性ホルモンが増えたわけではなく、皮脂の過剰な分泌を抑えていた女性ホルモンが更年期に減少することで、加齢臭が表面化しやすくなるのです。

つまり加齢臭は、男女ともに“そのうち誰にでも”起こりうる体の変化といえるでしょう。だからこそ、加齢による自然な現象として受け止め、早めに向き合いましょう。その一歩が、これからの毎日を心地良いものに変えていきます。

発“臭”メカニズムを知る!加齢臭はこうして起きる

カギは「皮脂の質の変化」

加齢臭は、40代以降に増えやすい体臭で、その臭いは「青臭い」「古本のような」「脂っぽい」と表現されます。

加齢臭が発生する原因は皮脂量の増加によるものと思われがちですが、カギとなるのは年齢を重ねると起こる「皮脂の質の変化」なのです。加齢とともに、私たちの皮脂の成分は変化していきます。若い頃の皮脂にはほとんど含まれず、酸化されやすい性質がある脂肪酸『パルミトレイン酸』と、活性酸素によって皮脂が酸化してできる「過酸化脂質」が増加します。それらが結びついて、空気中の酸素や紫外線の影響でさらに酸化すると、加齢臭の主成分とされる 「2‐ノネナール」が生じます。

つまり、加齢臭は単に「皮脂量の多さ」ではなく、「皮脂の質が変化し、酸化しやすくなること」が大きな要因といえます。

抗酸化力の低下

皮脂を酸化させる活性酸素とは、呼吸で取り込まれた酸素の一部が過剰に活性化されたものです。
細菌やウイルスを攻撃する免疫機能や細胞の情報伝達など、適量であれば体に重要な役割を果たしますが、加齢で必要以上に増えすぎると2-ノネナールの発生や病気の原因となって体に様々な悪影響を与えてしまいます。

しかし、本来私たちの体内には、過剰な活性酸素を抑える3つの抗酸化物質が備わっているのです。

SOD

スーパーオキシドディスムターゼは、生物が酸素を利用する過程で生じるダメージから身を守る抗酸化酵素です。最も毒性の強いとされる活性酸素(スーパーオキシド)を、より害の少ない過酸化水素へと変換する"応急処置役"を担います。

カタラーゼ

SODが作り出した過酸化水素を、さらに無害化するために水と酸素に分解する酵素です。

グルタチオン

グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸から作られる物質で、体内に広く存在します。主な役割は、活性酸素の除去/有害物質の解毒(特に肝臓)/ビタミンCやEの再活性化/免疫機能のサポート。
肝臓や皮膚に多く存在して、強力な「抗酸化作用」と「解毒作用」を持つ物質です。

この3つの抗酸化物質は、リレーのように連携してチームで働いています。

このチームが正常に機能している間は、体は酸化ダメージから守られています。しかし、これらの抗酸化システムの働きは加齢とともに少しずつ低下していき、体は次第に酸化ストレス状態となります。40代を過ぎた頃からの「皮脂の質の変化」に加えて、「抗酸化力の低下」という体の内側の変化が重なって、加齢臭が発生しやすい環境が出来上がってしまうのです。

加齢に伴う「皮脂の質の変化」や「抗酸化力の低下」からは誰も逃れられません。さらに、その他の要因でも体の酸化ストレスを高めてしまうことがあるといいます。その要因を紐解いて、理解することで、加齢臭に対する対策も見えてくるはずです。

酸化ストレスを高める生活習慣

酸化ストレスの発生は加齢だけではなく、生活習慣からも大きな影響を受けます。慢性的なストレスや睡眠不足、運動不足は酸化ストレスの常態化を招きます。また、脂質の多い食事は皮脂分泌を促して、酸化の元を増やしてしまいます。

中でも、喫煙や飲酒は影響の大きい生活習慣でしょう。喫煙すると大量の活性酸素が体内に取り込まれます。それを中和するために、体内にあるビタミンCやカロテノイドなどの抗酸化物質が消費されて皮脂の酸化が進みやすくなってしまいます。
さらに過度の飲酒も加わると、抗酸化物質の消費量は相乗的に増加して、その結果として体臭の悪化を招くのです。

加齢臭対策-抗酸化栄養素を摂取-

加齢臭の大元である皮脂の酸化を改善する「体の内側からの対策」として有効なのが抗酸化栄養素を摂取することです。

緑黄色野菜やフルーツ、ナッツなど、普段の食事にも抗酸化物質は含まれているため、意識して取り入れましょう。

加齢臭対策-入浴-

加齢によって、皮脂自体が酸化しやすくなること、体が酸化に抗う力が落ちてしまうことで発生する加齢臭。

抗酸化栄養素の摂取が「体の内側からの対策」であるならば、皮膚表面に存在する、酸化した皮脂に対する「体の外側からの対策」として有効なのは入浴です。

加齢臭は、皮膚表面の皮脂の酸化が一番の原因なので、臭いを落とすには皮膚表面を清潔に保つことが重要です!

体を洗うときの基本ポイント

こすらない
泡で洗う
洗う順番

オススメは薬用成分配合の“石けん”

GOOD! 洗浄力

ボディーソープ等に比べて、弱アルカリ性である石けんの方が皮脂の洗浄力が強い傾向があります。

GOOD! 消臭効果

消臭効果のある『カキタンニン』、酸化を抑制する『カテキン(チャエキス)』等の有効成分を含むものが効果的です。

入浴のいろは

1. ぬるめのシャワーで予洗い

体を洗う前に36〜38℃程度のぬるま湯でシャワーを浴びておくと、皮脂がやわらいで、洗浄時に汚れが落ちやすくなります。

NG! 熱いお湯

皮脂を落とし過ぎると、入浴後の乾燥→皮脂の過剰分泌につながってしまいます。

2. 石けんをよく泡立てる

きめ細かい泡は皮脂を包んで浮かせるので、こすらずに効率よく洗浄できます。皮膚の摩擦が減ると、入浴後の皮脂の過剰分泌も防げます。

NG! 石けんを直接肌に擦りつける

肌への刺激が強くて、洗浄効率も下がります。

3. 洗う順番は「上→下」

上から順に洗うと、泡と一緒に汚れが下へ流れ、洗い残しを防げます。また、最後に足元を洗うことで皮脂や菌の再付着を防いで、臭いの元を広げません。

4. 臭いの出やすい部位は「なで洗い」

皮脂腺が多く、加齢臭が出やすい部位はしっかり泡立てて、やさしくなでるように洗いましょう。

NG! ナイロンタオルで強く擦る・ 同じ部分を何度も洗う

気になる部位は強めに何度も洗いがち。洗い過ぎは過剰な皮脂の分泌を促して、かえって逆効果になることも。

5. 石けんをしっかり流す

すすぎは洗う時と同じくらい丁寧に。特に、泡が残りやすい耳の後ろやうなじ、わき、背中は念入りに流します。

NG! 洗い流しが不十分

石けん成分が肌に残ると、肌への刺激や臭いの原因になることも。

6. 体を拭くときは「押し拭き」

角質を傷つけて肌のバリア機能が低下しないように意識して、タオルは肌に軽く押し当てるように水分を吸い取りましょう。

7. 入浴後は保湿を

入浴直後は、皮脂が少なくてバリア機能が低下しているので、ものの数分で過乾燥になります。
保湿剤で肌を整えると皮脂の過剰分泌を防ぐことができるので、長期的な加齢臭対策につながります。

まとめ

いかがでしたか?

加齢によって皮脂の質が変化して、主成分である「2-ノネナール」が生まれることで発生する『加齢臭』。男性ホルモンの影響で、元々皮脂量の多い男性のイメージが強いですが、女性も更年期のホルモンバランスの変化をきっかけに『加齢臭』が表面化します。

つまり、誰でもそのうち臭う体臭なのです。

きっかけとなる「皮脂の質の変化」とは、皮脂が酸化するということ。若い頃は、元々体に備わった抗酸化力物質の働きによって防げていた皮脂の酸化が、加齢によって進む抗酸化力の低下によって歯止めが利かなくなります。
さらに、喫煙や飲酒、脂質の多い食事など、体の酸化ストレスを高めてしまう生活習慣によって、皮脂は増え、酸化は加速してしまうのです。
しかし、裏を返せばそうした生活習慣を改め、体の酸化を防ぐ抗酸化栄養素を意識して摂取することで、「体の内側からの対策」に取り組めます。

そして、皮膚表面の酸化した皮脂に直接的に働きかける、「体の外側からの対策」として有効なのが入浴です。
強くこすらずよく泡立てた泡で上から下の順番で洗うことで、加齢臭対策に効果的な『入浴のいろは』を身につけましょう。

入浴後は保湿も忘れずに!

  • 東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長 堀田晴美
  • ●監修者●

    東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長

    堀田 晴美

    ■経歴■
    昭和59年 北海道大学卒。
    東京都老人総合研究所(現在は東京都健康長寿医療センター研究所)にて、自律機能に及ぼす老化と皮膚刺激などの体性感覚。
    理学博士。

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