「うちの子、汗のニオイ大丈夫?」母親の不安と、言い出せない子どもの本音

思春期の中高生にとって、汗にまつわる悩みは深刻なストレス要因です。中でも「ワキ汗」や「汗のニオイ」に関しては、周囲の目が気になり、友人関係や学校生活にも影響を及ぼしかねません。

しかし、そうした悩みが「親に理解されていない」「誰にも相談できない」と感じている子どもも少なくありません。

2本の調査から見えてきたのは、「ワキ汗」に対する母子のギャップと、“誰にも相談できず”に悩みを抱える子どもたちの実態でした。

※出典:藤後悦子, 山極和佳.「汗かきの中高生をもつ母親の心配事」東京未来大学研究紀要, 第18巻, 2024年, pp.117–125.

※出典:藤本智子, 平山昌子, 加藤則人, 岩佐武, 八尾寛.「中高生の腋窩多汗症に対する認識調査:中高生患者と母親を対象としたインターネットアンケート調査」日本臨床皮膚科医会雑誌, 第40巻 第2号, 2023年, pp.170–180.

中高生の“汗の悩み”と母親の“気づき”のギャップ

2022年に実施されたインターネット調査では、以下のようなギャップが明らかになりました。

・「自分はワキ汗にかなり悩んでいる/悩んでいる」:中高生の90.7%

・「子どもが悩んでいると思う」:母親の65.6%

なんと約25ポイントもの差があるのです。

中高生と母親の脇汗の悩み認識ギャップ

この数字は、思春期の子どもたちが「汗の悩みを口に出しにくい」「親に相談しづらい」と感じている実態を浮き彫りにしています。

汗やニオイは、心と身体の成長の中でとてもセンシティブな問題。それだけに、親子であってもなかなか話題にしにくいのかもしれません。

「汗のニオイ」が心配な母、「汗ジミ」が気になる子

では、汗に関する具体的な悩みについて、母親と子どもでどのような違いがあるのでしょうか?

2023年3月に実施された別の調査では、「汗かきの中高生」を持つ母親200人に、汗に関する心配事や、子どもからの相談内容について聞き取りが行われました。

その結果、母親が最も心配していたのは「汗のニオイ(48.5%)」、次いで「汗ジミや汗の量など、見た目に関する人の目(47.0%)」でした。

汗のニオイに関する心配事について、子どものクラスメイトなど周囲の人からニオイについて指摘されることや、汗臭いにもかかわらず本人が気にしていないことを危惧するコメントもありました。

一方で、子どもから母親への相談内容で最も多かったのは「汗ジミや見た目に関する人の目(63.9%)」で、「ニオイ」(43.9%)はやや少ない結果となっています。

子どもの汗に関する母親の心配と子どもからの相談内容

このように、母親は「ニオイ」を気にし、子どもは「見た目」を気にしているという意識のギャップが現れています。

汗に関する悩みの相談相手は?子どもは母親への相談が最多!

調査では、ワキ汗の悩みについて中高生が相談した相手と、母親が子どものワキ汗について相談した相手についても尋ねています。

その結果、中高生の相談相手で最も多かったのが母親で、57.9%でした。その次が友人ではあるものの、その割合は24.8%であり、母親への相談数に比べると半数程度にとどまっています。

中高生のワキ汗に関する相談相手

また、母親が自分の子どものワキ汗について相談した相手で最多だったのが、自分の家族(配偶者など)で54.9%でした。

母親が子どものワキ汗について相談した相手

しかし、別の調査では「誰にも相談したことがない」と回答した母親が61.5%にも上っていたことが明らかになっています。

子どもの“気づかれないSOS”に、大人ができること

子どもが悩みを話さないこと自体が、悩みの深さを物語っている場合もあります。

まず大切なのは、「この年頃の子は、悩みを口に出すこと自体が難しい」という前提を大人側が理解すること。そして、話しやすい雰囲気を日頃から作っておくことです。

■家庭でできるサポートのヒント

・子どもが話を切り出せるよう、雑談の中で汗や体臭の話題に触れてみる

・デオドラントや汗対策アイテムを家に常備し、「使いたければ使ってね」と自然に伝える

・無理に聞き出そうとせず、「話したくなったらいつでも聞くよ」と距離感を保つ

また、専門医に相談することも一つの選択肢です。多汗症や体臭の悩みは、本人の感じ方だけではなく、医学的な視点でのサポートが有効な場合もあります。

まとめ:汗の悩みは「思春期のこころの声」

汗やニオイに関する悩みは、思春期の心の変化と密接に関係しています。

母親や大人の視点からは些細に見えることでも、本人にとっては大きなストレスになり得る――そのギャップを認識し、子どもが声を上げやすい環境をつくることが求められています。

「うちの子は大丈夫」と思い込まずに、子どもが“誰にも言えないこと”を抱えていないか、気にかけてみるタイミングかもしれません。

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