▲ 朝焼けの雲海が神々しく美しい「国見ヶ丘」
高千穂 神楽
天孫降臨の地 神話をめぐる旅
日本の国の成り立ちを記した『古事記』と『日本書紀』。
記紀編纂1300年を超えた今も、神話ゆかりの伝承を大切に神々を敬い、
暮らしている人々がいます。
「高千穂神楽」で知られる宮崎県 高千穂を訪れました。
天照大神(アマテラスオオミカミ)は孫である邇邇芸命(ニニギノミコト)に
地上世界を治めるよう命じました。
邇邇芸命は三種の神器を授かり天鈿女命(アマノウズメノミコト)や
道案内の猿田彦命(サルタヒコノミコト)を伴って
日向(ひむか)の高千穂の槵觸(くしふる)峰に降り立ちました。
これが「天孫降臨」日本の始まりの物語です。
古事記と日本書紀
どちらも日本の成り立ち、天皇家のルーツを記した歴史書です。「古事記」(712年編纂)は全3巻で神代から推古天皇(554~628)まで、「日本書紀」(720年編纂)は全30巻で神代から持統天皇(645~703)までの物語が描かれています。「古事記」は大和言葉が使われており、国内向けに天皇即位の正当性と価値観の統一を図る目的がありました。「日本書紀」は漢文で書かれており、国外向けに国家としての威厳を保持し、日本の正史を伝える役割があったと考えられます。
「高千穂」で偉大なる自然に心洗われる。
高千穂町は宮崎県の最北端・熊本県阿蘇地方に近い、九州山地のほぼ中央に位置する山里です。
福岡から車で約3時間神話の世界にトリップしてきました。まず訪れたのは、高千穂の代表的な観光名所「高千穂峡」。
阿蘇の火山活動でできた柱状節理(ちゅうじょうせつり※)の雄大な峡谷に、約17mの高さから「真名井(まない)の滝」が流れ込みます。
天孫降臨の際に、天村雲命(アメノムラクモノミコト)という神様が水種を移した「天真名井(あまのまない)」の湧き水が水源だといわれています。ここではぜひボートを借りて峡谷へ。水しぶきが降り注ぐ迫力ある滝と、自然の峡谷美を間近で楽しめます。
※柱状節理…溶岩が冷却して角柱状に固まり筋が際立った岩盤
岸壁にある月形は、天岩戸神話で天照大神が天岩戸を出た際に、須佐之男命が二度と悪さをしないと反省の印に刻んだものと伝えられています。
おのころ池の真ん中にあるのが、国生みの神話で最初に作り出された「おのころ島」。
神様に会いに行く、心が清らかに澄んでいく。
▲ 八百万の神々が集まったと伝わる「天安河原」。神聖な場ということで新たに注連縄(しめなわ)が張られました。高千穂の注連縄は、切れない吉数で7本、5本、3本の藁束を吊り下げるのが特徴です。
次は有名な天岩戸神話(6P参照)ゆかりの場所である「天岩戸神社」へ。
西本宮の対岸に、天照大神が弟の須佐之男命(スサノオノミコト)の乱暴ぶりに怒って隠れたという天岩戸があります。ご神体は天岩戸そのもの。約30分毎に神職の方の案内があり、拝殿裏にある遥拝所(ようはいじょ)から天岩戸を直接拝観できました。
そこから徒歩10分、岩戸川の岸辺にあるのが「天安河原(あまのやすかわら)」。八百万の神々が、岩屋から天照大神を外へ連れ出す相談をした場所です。洞窟のまわりには訪れた人々の祈りが込められた積み石が無数にあり、神秘的な雰囲気を漂わせています。
一方、天孫降臨神話(6P参照)ゆかりの地が、邇邇芸命が降り立ったという槵觸(くしふる)の峰。そこに鎮座する「槵觸神社」に参拝し、小高い丘へと上り、「高天原(たかまがはら)遥拝所」へ。ここは降臨された神々が天上を懐かしみ、遥拝した所と伝えられています。天と地を結ぶ場所といわれており、心なしかパワーがあふれているよう!
また「荒立(あらたて)神社」は、天孫降臨の道案内をした猿田彦命(サルタヒコノミコト)と、その後結婚した天鈿女命(アマノウズメノミコト)を祀っており、芸能と縁結びにご利益があるとされる神社です。運よく宮司さんがいて、御開帳いただいた本殿の中で心静かにお参りできました。
世の中が安泰になるよう祈りを込めて「天安河原」で石を積みました。3、5、7の奇数で重ねるのが良いとか。
「天岩戸神社」西本宮の拝殿でお参り。ご神体の天岩戸はこの裏に。
猿田彦命と天鈿女命を祀る「荒立神社」。神様の御前でお祈りできてありがたかったです。
ひんやりとした空気に包まれた「高天原遥拝所」。天を仰いで深呼吸したくなりました。
神話は人々の生きる力に。
伝承文化の「高千穂神楽」。
▲ 1778年建造の本殿は国の重要文化財。
夕暮れに訪れたのは「高千穂神社」。神楽殿があり、観光として誰もが神楽を楽しめるよう、毎晩ここで「高千穂神楽」が奉納されています。当日受付もありますが、事前に高千穂町観光協会のホームページから予約しておくのがオススメです。
神楽は20時から。高千穂神社に参拝して夕食を済ませたら、再び神楽殿へ。少し早めに到着したので比較的前列で拝観できました。
公開されているのは、33番まである夜神楽のうち代表的な「手力雄の舞」「鈿女の舞」「戸取の舞」「御神体の舞」の4番。3つは天岩戸神話の名場面で、岩戸の前でこんな風に舞い踊ったのだろうかと想像が膨らみます。「御神体の舞」は国生みの舞。伊邪那岐命と伊邪那美命が酒を造り、仲良く飲んで抱擁する夫婦円満の舞です。
神話は日本のルーツを伝える物語ですが、ときとして人間のように喜怒哀楽を表現する神様たちに、親しみさえ感じられます。エピソードを思い浮かべながら高千穂をめぐると、より思い出深い旅になりますよ。
根元が一つになった夫婦杉。夫婦や恋人と3回廻ると幸せになるとか。
手力雄(たぢからお)の舞
隠れた天照大神を探すため、力の強い手力雄命が岩戸の前で音を聞いたり、考えたりする様子を表現。
鈿女(うずめ)の舞
天照大神を岩戸より誘い出そうと面白おかしく舞う「鈿女の舞」。
戸取(ととり)の舞
手力雄命が岩戸を取り除き、天照大神を迎え出す勇壮な「戸取の舞」。
鈿女(うずめ)の舞
伊邪那岐と伊邪那美の二神が酒造りをする「御神体の舞」。
舞台の四方には「彫り物(えりもの)」という、陰陽五行や十二支など縁起物を描いた切り絵が飾られています。
高千穂の夜神楽
(国の重要無形文化財)
高千穂地方では、秋の収穫が終わる11月中旬から2月にかけて各集落で「夜神楽」が行われます。
実りの感謝と翌年の五穀豊穣を祈念し、夜を徹して33番の神楽を舞い、奉納する神事です。
天照大神が天岩戸に隠れたときに、岩戸の前で天鈿女命が面白く舞った由縁を起源とし、平安末期から鎌倉時代にかけて成立したといわれています。
※今期は感染予防のため一般公開せず神事のみ
神話の里 高千穂
GUIDE MAP
1. 天岩戸(あまのいわと)神社
天岩戸神話の舞台で、主祭神は天照大神。西本宮はご神体の天岩戸がある場所、東本宮は天照大神が住んだところです。
2. 荒立(あらたて)神社
天孫降臨の道案内をした猿田彦命と天鈿女命が結ばれ、荒木でお宮を建立したことに由来。縁結び、芸能、交通安全、厄除けの神として信仰されています。
3. 槵觸(くしふる)神社
天孫降臨の地と伝わる槵觸の峰に創建された神社。もともとは峰全体が信仰対象でしたが、元禄7年に社殿を建立。降臨された神々が祀られています。
4. 高千穂神社
約1900年前に創建。邇邇芸命をはじめとする神々を祀る高千穂郷八十八社の総社。所蔵品の鉄造狛犬一対と、安永6年造営の本殿は国の重要文化財。
5. 国見ヶ丘
標高513m、神武天皇の孫・建磐龍命(タケイワタツノミコト)が九州統治の際に国見したという伝説の丘。秋の早秋、条件が合えば雲海がみられる絶景スポット。
高千穂牛ステーキコース 2,600円~
A 高千穂牛レストラン和(なごみ)
日本一に輝いたブランド牛「高千穂牛」をJA直営レストランでいただきます。隣接の精肉直売所では購入もOK。
高千穂がまだせ市場内
定休日:毎週水曜 TEL:0982-73-1109
チキン南蛮丼
ソフトクリーム(マンゴー)400円
B 道の駅 高千穂
チキン南蛮に、マンゴーソフト。おなじみの宮崎名物を堪能できます。道の駅ならではの特産品もいろいろ!
定休日:無休 TEL:0982-72-9123
高千穂あまてらす鉄道
廃線となった鉄道を公園化。高千穂駅~高千穂鉄橋まで、グランド・スーパーカートで往復します。
<運行時刻>9:45~15:40(受付9:25~)
<乗車料金>高校生以上1,500円
小中学生900円、未就学児500円
※1日10便(臨時便を除く)、当日受付のみ
TEL:0982-72-3216
高千穂峡 貸しボート
真名井の滝や峡谷を手漕ぎのボートから楽しめます。
<営業時間>8:30~17:00(最終受付16:30)
<乗船時間>30分
<定員>大人3名 ※未就学児を含む場合4名
<料金>ボート基本料金3,000円+乗船料金
(中学生以上1,000円、未就学児・小学生500円)
高千穂神楽
夜神楽三十三番の中から代表的な4つを観覧できます。
<時間>20:00~21:00(毎晩)
<拝観料>大人1,000円
※小学生まで無料
<場所>高千穂神社神楽殿
観光のお問い合わせは
(一社)高千穂町観光協会 TEL:0982-73-1213
https://takachiho-kanko.info/
※観光スポット巡りに同行してのガイド(有料)も行っています。
編集後記
高千穂の自然や神話、グルメなどをご紹介した今回の「いいものみっけ」はいかがでしたか?
高千穂峡をはじめとした雄大な自然は、まさに圧巻!水の流れや雲の動きを見ているだけでも、十分に心が癒されました。そして見どころは、何と言っても高千穂夜神楽!目の前で見る神楽は迫力満点でした。皆様もぜひ、魅力あふれる高千穂へ足を運んでみてくださいね。